りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

批評の教室(北村紗衣)

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「批評とは作品を楽しむためにある」と言い切る著者が、批評を「精読する」「分析する」「書く」の3つのステップに分けて、その手法を解説する入門書です。ここでいう「作品を楽しむ」とは、単に面白かったという感想を持つことにとどまりません。ある作品がなぜ面白かったのか、あるいはなぜつまらなかったのかのかを理解するために、作品の隠れた意味を引き出す「解釈」と、作品の位置づけや質を判断する「価値づけ」を行うことこそ、批評であるというのです。

 

批評を描くための4つのステップである「精読する」、「分析する」、「書く」、「コミュニティを作る」が、そのまま各章のタイトルになっています。作品内の事実認定や、語り手の嘘を見抜くことや、歴史的背景の重視は当然のようですが、作者の意図を無視したり、作品に書かれていないことに着目するのは難しい。その一方で書くことの重要性は理解できます。私が綴っているブログは批評ではなく備忘録にすぎませんが、書くことを習慣づけることで、作品を丁寧に理解することを心掛けるようになりましたので。

 

とはいえ、ターゲットを想定するとか、オリジナリティのある切り口を見つけるようなことまで、本書に倣う必要はないとは思っています。人に好かれようという意識はありませんが、商業媒体に書こうとは露ほども思っていませんので。ただしちゃんとした批評をするには、本書の副題である「チョウにように読み、ハチのように書く」ことの重要性は理解できました。批評を読む時には、その批評が突っ込むポイントがズレていないかどうかを気にすることにしようと思います。

 

2022/2