りぼんの読書ノート

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木曜日にはココアを(青山美智子)

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必ず木曜日にきて同じ席に座り、いつもココアを飲みながらエアメールを書く女性に思いを寄せた、若い喫茶店主からはじまる連作ストーリーです。彼女はなぜその日に限って手紙を書かずに涙を流したのでしょう。登場人物を次々と変えながら日本とオーストラリアを繋ぐ12の物語は、やがてひとつに結びついていきます。

 

主夫の旦那の代わりに初めて息子のお弁当を作ることになったキャリアウーマン。厳しいお局先生のいる幼稚園で働く新米先生。仲たがいしていた友人の結婚を心から祝福できるようになったベテラン先生。新婚旅行で訪れたシドニーで金婚式を迎えた老夫婦の姿に心をなごませる新婚夫婦。ともに苦難を乗り越えてきた老夫婦。誰にも認められなくても自分の好きな絵を描き続ける女性。銀行を辞めてサンドイッチ屋をシドニーに開業した男性。その男性に魔法をかけてイギリスに留学してアロマセラピストになったという魔女になりたかった女性。

 

さらには彼女との文通から翻訳家になった日本人女性。彼女とカフェで会話を交わした若い女性メアリー。そして喫茶店でココアを飲んでいた女性マコは、かつてメアリーの家にホームステイしてからずっと文通を続けていたのです。マコが流した涙は、メアリーが生死にかかわる手術を受けることになったからでした。そして喫茶店主ワタルがマコにかけた言葉が・・。

 

もうひとり、物語の主人公ではないものの、多くの人物と関わっていたマスターの存在も忘れてはいけませんね。心優しい人しか登場しないハートウォーミングなおとぎ話ですが、たまにはこういう物語もいいものです。

 

2021/8