怪談シリーズ「三島屋変調百物」の5作目では、ついに百物語の聞き手が交替することになります。本書をもってシリーズ第1期が完結したということなのでしょう。
「開けずの間」
娘の快癒を願って塩断ちをすると言い出した女房を殴ってしまったという語り手は、塩断ちが原因で生家が絶えてしまったという壮絶な経験を語ります。望みに見合う犠牲を払えば何でも叶えてくれるという「行き逢い神」を呼び込んでしまった家では、何が起こったのでしょう。人命や運命に関わる望みを叶えるには、どのような犠牲が必要だったのでしょうか。
「だんまり姫」
若い頃は死者を呼び寄せてしまう「もんも声」の持ち主だったという老女は、生まれてから一語も発しない姫君の世話をした経験を語り始めます。姫君の失声には、殿の血を継ぐがゆえに非業の死を遂げざるを得なかった10歳の少年「一国様」の無念が関わっていたのですが・・。
「面の家」
不良少女が破格の高給で依頼されたのは「面」の番でした。その仕事は邪な心の持ち主にしか務められないというのですが、もちろん彼女はしくじってしまいます。「面」とは人の悪心が凝り固まった存在のようですが、この物語を語ったことで少女は更生できるのでしょう。
「あやかし草紙」
古書店・瓢箪古堂の若旦那、勘一が、写本にまつわる怪異を語ります。いわくつきの草紙の模写を依頼された浪人は、何を知ってしまったのでしょう。どうやら勘一も、その草紙の模写に携わったことがあるようなのですが・・。
「金目の猫」
百物語の聞き手を務めていたおちかが、ついに結婚。怪異の物語を聞き続けたことで、おちかは抱えていた業から自由になれたようです。本書からおちかと並んで聞き手となっていた、三島屋の次男坊・富次郎に、兄の伊一が子供のころの不思議な話を聞かせます。「商人」も、富次郎が次の聞き手となることを了解してくれた模様。怪異話を絵にして封じるという聞き手の登場で、第2期の物語がどのように変貌していくのかも楽しみです。
2019/9