りぼんの読書ノート

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ペナンブラ氏の24時間書店(ロビン・スローン

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青年クレイが再就職した「ペナンブラ氏の24時間書店」は、なんとも不思議な店でした。ほとんど客も来ないのに終日営業で、一般客には解放していない奥の棚に納められた謎の本を少数の常連客に貸し出すのがメインの仕事のよう。しかしそこには、世界を揺るがす秘密が隠されていたのです。
 

 

こんな書き出しで謎の秘密結社まで登場させておいて、IT系の話に展開していくとは意表を衝いてくれます。クレイは、ネットにアップしたハイパーターゲティング広告を見て書店にやってきたグーグル社員のキャットや、オッパイ・シミュレーションを開発してIT長者になった幼馴染のクレイらとともに、暗号解読に乗り出すのです。そして書店オーナーの老ペナンブラ氏も、初期のコンピュータ・オタクだったというのですから。 

 

しかし、「グーグルの知る限りでは存在していない古書」を最新スキャナーでアップロードして、人類の百万年に相当するというグーグルのIT資源を用いても、その暗号は解読できませんでした。はたしてそこに隠されている秘密とはどのようなもので、それを解読することは可能なのでしょうか。実はその手掛かりは、初期の活版印刷に関係しているというのですが・・。一周回ったところで、知的資源のあり方まで考えさせてくれる作品でした。 

 

著者は後の『ロイスと歌うパン種』で、伝説のパン種とロボットアームを融合させておいしいパンを焼く主人公を登場させてくれます。こちらも楽しい作品でした。 

 

2019/9