りぼんの読書ノート

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三鬼 三島屋変調百物語四之続(宮部みゆき)

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神田三島屋の叔父夫婦のもとに身を寄せた娘おちかが怪異話を聞く「変わり百物語」のシリーズ第四弾。「聞いて聞き捨て。語って語り捨て」のはずでしたが、そうもいかないケースも起こります。そして、おちかを囲む人々にも変化が・・。

「迷いの旅籠」
百姓娘が語り出したのは、とある農村で起こった幽霊話。中止にされた祭りのかわりに、他所者の絵描きが離れ屋いっぱいに描いた絵図が、あの世との境界を開いてしまったのです。やはり、死者と再会したいという禁断の想いは封じておくべきなのです。

食客ひだる神」
絶品の弁当を拵えるだるま屋が、毎年夏に休業する理由とは何だったのでしょう。弁当屋を影で支えていた謎の存在は、節度を保ちさえすれば、怪異と共存することも可能であることを教えてくれたようです。もちろん、怪異の種類にもよるのですが。

「三鬼」
藩主の失政によって人心が荒廃した山陰の小藩では、人が住む限界を超えた険しい山を開拓するために送りこまれた村が放置されていました。罪一等を減じられて山番を務めることになった藩士が見たものは、鬼というべき存在だったのですが、その正体もまた哀しいものだったのです。

「おくらさま」
歴代の美しい姉妹たちがお世話してきた、商家の守り神「おくらさま」とは何だったのでしょう。ある事件以来「時を止めた」という謎めいた老婆が語ったのは、やはり悲しい物語だったのです。おちかは、突然現れて消え去った老婆を探し求めるのですが・・。

この物語の中で、レギュラーメンバーの交替が起こります。自分の心を抑えられずに涙するおちかは、「おくらさま」になることはないのでしょう。どうもドラマを見て以来、おちかのイメージが波留になってしまいます。

2017/5