りぼんの読書ノート

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宮部みゆき全一冊

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作家生活30周年記念として出版された、新潮社による企画もの。巻頭のロングインタビューにはじまり、単行本未収録の短編3作、単行本未収録のエッセイや書評や対談、さらにはいしいひさいち氏による漫画作品や、新潮講座の講師による短篇紹介など、盛りだくさんの内容が詰まっています。
 

 

その中でも一番興味深かったのは、インタビューの中で自作について語ったところ。著者自身による自作解説になっているのです。印象に残った個所をメモしておきましょう。 

 ・『蒲生邸事件』の女中ふきは、可憐で芯が強くて真っ直ぐで、孤宿の人』のほう、『この世の春』の多紀、『荒神』の朱音など、その後の宮部作品の女性登場人物の原型になっている。 

 ・犯人像を徹底的に描いた『模倣犯』と、犯人像を完全に空白に抜いた『理由』は同時期の連載であり、著者の中でバランスが取られていた。単行本は『模倣犯』が3年ほど後であり、全然気づきませんでした。 

 ・『ブレイブストーリー』はゲーム中毒の賜物であったとのこと。これは気づいていましたね。ただし『ICO』や『ドリームバスター』など、著者のファンタジーは期待外れに終わる作品も多いのです。 

 ・おちかに始まる『百物語シリーズ』の聞き手は次々と交替していき、3人から4人になる予定だそうです。1人の聞き手に99の物語を聞かせるための時間を考慮すると、最後には黒船が来てしまうとのことです。確かにこのシリーズが幕末ものになってしまっては辛いですね。京極夏彦さんの『百物語シリーズ』は、明治期以降までも続くのですが。 

 ・『荒神』の怪物は「大魔神」の子孫であり、舞台となっている2つの藩のモデルは、アルザス地方だとのこと。ドーデの『最後の授業』の世界ですね。 

 ・著者はスティーブン・キングエピゴーネンになろうと思って『龍は眠る』を書いたとのこと。執筆中は、キングになりきったコスプレ状態だったそうです。 

 

ちなみに私がはじめて読んだ宮部作品は『レベル7』でした。この作品の発想に衝撃を受けて、続けざまに『魔術はささやく』や『パーフェクトブルー』を読み、一気に虜になってしまったのです。 

 

2019/8