サブタイトルは「AIと格差は世界を滅ぼすか」。国際ジャーナリスト・大野和基氏が、世界の「知の巨人」8人と対話した論考集には、来たるべき世界を予測するヒントが詰まってています。
・ジャレド・ダイアモンド「資源を巡り、文明の崩壊が起きる」
著名な進化生物学者は、感染症、テロ女リズム、移住の温床となる格差こそが、世界の最大問題となっていると警鐘を鳴らします。現代社会に伝統的社会の知恵を導入しえる多様性が望まれているのです。
・ユヴァル・ノア・ハラリ「近い将来、役立たず階級が大量発生する」
AIの登場がもたらす恩恵を享受しえるのは一握りの特権階級にすぎず、役立たず階級が大量発生することが、民主主義に危機をもたらす可能性は高そうです。すでにその萌芽は各地で起こっているのですから。
・リンダ・グラットン「人生100年時代、生き方は三つのステージからマルチ・ステージへ」
100年の人生が現実化しつつある中では「教育・仕事・引退」という3ステージ制には意味がなくなるのでしょう。個人レベルでも意識の変革が求められる所以です。
・ニック・ボストロム「AI万能時代が訪れ、働き方は根本的に変革する」
AIの第一人者は、スーパーインテリジェンスの誕生が早まったと当初予想を修正しています。人類を超える知能を、人類は制御できるのでしょうか。この問いはSF世界だけのものではなさそうです。
・ダニエル・コーエン「テクノロジーは中流階級を豊かにしない」
トリクルダウンは幻想であり、トップが総取りする構図はますます加速しているようです。そんな社会では、テクノロジーもまた格差を生み出すツールでしかありません。
・ウィリアム・J・ペリー「北朝鮮は核開発をあきらめない」
クリントン政権の国防長官早まった、一転して現実的な政治課題を遡上に乗せています。「偶発核戦争は起こり得る」とは、何とも不気味な指摘です。
・ジョーン・C・ウィリアムズ「民主主義を揺るがすホワイト・ワーキング・クラスという人々」
アメリカンドリームが神話と化して中間層が地盤沈下を起こしている中では、民主主義は機能しないのでしょう。これは既に予言ではなく、現実に起こっていることですね。アメリカに誕生した政治モデルが、世界に波及しようとしています。
・ネル・アーヴィン・ペインター「アメリカは分極化の波にさらされる」
自分たちの優越性を当然と思っていた人々の地位が揺らいだ時の反動が、一番大きいようです。氏の論旨は前者と変わりませんが、長年の儒教国家である隣国の「恨」の深さも、同根であるように思えます。
2019/9