りぼんの読書ノート

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中原の虹3(浅田次郎)

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前巻で、このシリーズの前作『蒼穹の昴』以来のヒロインであった西大后も世を去り、中心人物を失った清朝は一気に滅亡へと向かいます。実はそれこそが、中国を破滅から救うために西大后の書いたシナリオでした。物語上は取り立ててドラマチックな盛り上がりもないまま、孫文によって南京に樹立された中華民国との交渉によって、宣統帝溥儀は6歳にして退位。

物語の中心は、清朝末期に復権を果たし、混乱に乗じて国家首班の座を窺う袁世凱と東北三省の主権を握って割拠しようとする張作霖の2人に、はっきりと移りました。しかも真の帝位を具現化するとの「竜玉」は、張作霖の手に落ちているのです。

浅田さんの作風は、こういう物語に向いているのでしょうか。誰一人、「悪人」は登場しないのです。彼の手にかかると、通常は権力志向バリバリの悪役に描かれることが多い袁世凱も、馬賊の親玉で粗暴きわまりない張作霖も、清朝末期の無能な皇族や官僚たちですら、誰も彼も「いい人」になっちゃうのです。

次巻が最終巻となります。中国の混乱期は、中華人民共和国の成立までまだ30年以上も続くのですが、この壮大な物語には、どこまでが描かれるのでしょう。主人公が張作霖ですから、彼の短い栄光と、関東軍による爆殺まででしょうか。(犯人が関東軍というのには、最近異論も出ているようですが)。その時に「竜玉」はどうなってしまうのでしょう。息子・張学良の手から蒋介石、さらには毛沢東にでも伝わるのでしょうか。

2008/1