りぼんの読書ノート

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ゼノサイド(オースン・スコット・カード)

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エンダーのゲーム死者の代弁者に続く、シリーズ第3作。(サイドストーリーであるエンダーズ・シャドウは別です)

前作から30年後、エンダーによって3つの異種族が共生する道を指し示され、スターウェイズ議会から半独立状態となった殖民惑星ルジタニアに危機が訪れます。人類に致命的な病気をもたらすデスコラーダ・ウィルスの蔓延を恐れる議会が、ウィルスを惑星ごと殱滅しようと粛清艦隊を派遣し、到着が目前に迫っていました。一方、ルジタニアでは、変異を繰り返して耐性を高めていくウィルスと不断の戦いを
強いられている殖民人類と、ウィルスなしでは生きられない現地生物ペケニーノの緊張も高まっていたのです。

さらに、ネットワーク上の知的生命体でエンダーの協力者であるジェインの存在も、神の声を聞く異常な天才を戴く中国系惑星パスの女性たちによって明るみに出され、ジェインの「生命」も風前の灯火に! 1つの種を生き残らせれば他方が滅亡するというジレンマにどう立ち向かうのか、敬虔なモルモン教徒である著者が準備した解決策は、いかにも宗教的なものでした。

ネタバレは書きませんが、究極的には「祈り」がもたらしたとも言える手法でこれらの問題をまさに「奇跡」的に解決し、さらには個人レベルでの「奇跡」すら起こしてしまい、なんと欲張りなことにビッグバンの秘密すら明らかにしてしまいます。作者の中国系社会の描き方も含めて、ちょっと納得いかない展開でした。

主人公エンダーも既に初老の男性であり、前作で結婚した異生物学者ノヴィーニャに愛想つかされたりして、最後には「奇跡」を起こすものの、かつての魅力は激減。このシリーズはもう1作あるのですが、前作まででやめておくべきだったかも。ただ、第1作以来の再登場を果たした意外な人物と、惑星パスの意外なヒロインのその後が気になりますので、ここまできたら次作も読まざるを得ません。^^;

2008/1