りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

白鳥異伝(荻原規子)

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荻原さんもまた、「ページターナー」ですね。『勾玉シリーズ3部作』の2作目です。これ、順番に読めば良かった・・。

女神を失った悲しみから、豊葦原の国を混沌に返そうとする男神男神の意を受けて豊葦原を統べる「輝(かぐ)」の子孫たちを癒すのが、女神が産み落とした「闇(くら)」の一族と、8つの勾玉。第一作では、闇の巫女姫「水の乙女」が輝の「風の若子」と結ばれ、豊葦原の国には平穏がもたらされたのですが、両者の血統と勾玉はまだ、各地に残されていたのです。

・・・という視点から、再構築された、ヤマトタケル伝説。大王(おおきみ)の一族に、稀に発現する、忌むべき「タケル」の力。「大蛇の剣」の主として荒ぶる力を癒すことができるのは、各地の「橘」一族の巫女によって伝えられている勾玉とされます。幼馴染の小倶那が、禁忌の血を引く「タケル」と知った遠子は、自ら最愛の小倶那を滅ぼすために、出雲→日向→東国へと各地の勾玉を集めながら、彼の後を追うのですが・・。

もちろん遠子の雛形は「オトタチバナヒメ」です。悲劇に終わるヤマトタケル伝説を、荻原さんはどう料理したのか。「力を持つが短命」とされるタケルの運命は代わらないのでしょうか。

第一作に比べて、作者の生死観や歴史観は、前面には出ていません。その分、いかにも楽しんで書いたと思える、純愛ストーリーに仕上がっています。肩肘張らずに読める本(もともとはヤングアダルト向け)ですが、やっぱり第一作から順番に読むべきですね。

2006/9