りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

夢の守り人(上橋菜穂子)

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シリーズ第3作です。舞台はふたたび「新ヨゴ王国」に戻ってきます。

現実世界(サグ)と異世界(ナユグ)が重層構造を持っていることは、第1作の精霊の守り人で示されましたが、ナユグはさらに多層な構造を持っていて、そのひとつである「人の夢を糧とする異界の花」が形作っている世界の物語。

「歌い手」によって「花」に囚われ、目覚めなくなった人々があちこちで現れます。52年ぶりに開花の時を迎える「花」は、そのために人の夢を必要とするのですが、本当なら花とミツバチの関係のように、人の心を捉えるにしても一時的なはずなのに。

やがて「花」に囚われたままの人々は、さまざまな理由で「現世から逃避したい」と思っている人たちであると判ってくるのですが、それにしても一時の気の迷いまでも道連れにして破滅させようとするなんて、「花」にいったい何が起こっているのか?

バルサの友人である呪術師タンダが、姪を救うために異世界に飛び込み逆に捉えられて「花」に操られる人鬼と化し、皇太子チャグムまでもが眠りから目覚めなくなるに至って、大呪術師トロガイは自ら異世界に入り込む決意をするのですが、それは彼女が52年前に経験した不思議な恋の結末を見ることに繋がるのでした・・。

ちょっとファンタジーを読む気分でない時に読んでしまったせいか、物語の設定自体にかなり違和感を覚えてしまいました。なんというか、「花の世界」に底の浅さを感じてしまったんですね。荻原さんの『勾玉シリーズ』のほうに、ずっと深みを感じます。もっとも、「世界観」すら持っていない雑多な「ファンタジーもどき」が溢れる中で、この2つが和製ファンタジーの双璧であるとの評価には変わりありません。

2009/4