りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006/9 ミーナの行進(小川洋子)

9月は、いい本にたくさんめぐり合えました。次点にあげた4冊を含めて、どの本にも優劣つけがたいのですが、「本に対する愛情」が前面に出されている2冊を上位にしてみました。「ストーリーのおもしろさ」や「環境への警告」とかで括ると、また、別のセレクションになるのでしょうが・・。^^
1.ミーナの行進 (小川洋子)
伯母の家で、1歳年下の従妹ミーナと暮らした1年間の思い出。デティルの積み重ねによって描き出される、ミーナと朋子の世界が時のフィルターを通すことによって、大きな流れになっていきます。30年後の2人がどうなったのか・・もちろんここには書きません。

2.風の影 (カルロス・ルイス・サフォン)
「忘れられた本の墓場」で、運命の本『風の影』に出会ったダニエル。作者フリアン・カラックスは、内戦中に謎の失踪を遂げていました。彼の足跡を追う中で明らかにされるのは、内戦に傷ついた都市の記憶。1冊の本を巡って展開される、数世代の人々の人生を追う視点に、内戦に傷ついたバルセロナへの、作者の深い愛情を感じる本です。

3.白鳥異伝 (荻原規子)
ヤマトタケルの伝説を、「輝(かぐ)」と「闇(くら)」のテキストに置き換えて綴りあげられた、古代の純愛ロマン。幼馴染の小倶那が、禁忌の血を引く「タケル」と知った遠子は、愛する小倶那を自ら滅ぼすために、彼の後を追うのですが・・。第1作と比べて、作者の生死観や歴史観は後ろに退いた感じですが、スケールの大きさは健在だし、何よりキャラも展開もお見事です。

4.クリムゾン・リバー (ジャン=クリストフ・グランジェ)
アルプス山間の大学街での連続猟奇殺人事件と交差するのは、遠く離れた別の町で14年前に亡くなった少年の墓荒らし事件。全く無関係に思える2つの事件が、2人の個性派警官によって、「クリムゾン・リバー」という謎の言葉で結び付けられます。意表を衝かれる展開で読ませてくれるデビュー作です。

5.リンドキストの箱舟 (アン・ハラム)
異常気象象によって野生動物は絶滅し、凍土と化した近未来の地球。失われた動物たちの種を保存している不思議な生き物たちを連れて、雪に閉ざされた荒野をたった1人で駆け抜ける少女スロー。「『地球に優しい』などという傲慢な言葉を吐くべきではない」との翻訳者の後書きにも、グッときちゃいました。




2006/10/1