りぼんの読書ノート

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ウィーン物語(宝木範義)

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ウィーンというと、何を思い浮かべるでしょうか。ドナウ川神聖ローマ帝国ハプスブルク家、「会議は踊る」、シュテファン聖堂、モーツアルト、ウィンナー・ワルツ、クリムト、分離派、フロイト、ウィンナー・コーヒー、ザッハー・トルテ・・。色んな言葉が浮かんできますね。この本は、神聖ローマ帝国の都として、ハプスブルク家の支配のもとで600年の長きに渡って中欧に君臨してきた都市の、歴史と魅力を紹介してくれます。

ウィーンというと、「古き良き時代」を体現してはいても、なんとなく時代遅れで、むしろ没落しつつあるという印象を持つ人が多いのではないでしょうか。でも著者は、ウィーンが保ってきた伝統の力こそが、現代世界で大きな役割を果たすべきである・・と主張しているかのようです。

確かに旧東欧の自由化に際して、「東欧と西欧の仲立ち」として大きな力を発揮した都市は、ウィーンでした。アメリカ一極集中への批判勢力として「ヨーロッパ的な伝統の力」が見直されている現代において、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ・・と連なる欧州勢力地図から、ウィーンが外れる事はないのでしょう。

旧ユーゴの内戦に際して、「オーストリアハンガリー二重帝国が存在していれば良かったのに」と思った人が多かったとも聞きます。決して郷愁だけではなく、今後の世界を考えていく上で、「緩やかな結合」というものが、ひとつの回答であることを意識した言葉なのでしょう。

2006/9