りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ミーナの行進(小川洋子)

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中学生になった女の子が、ミーナの家で暮らす1年間の物語。家庭の事情で母と離れ、伯母の家で暮らすことになった朋子。伯母の結婚相手はドイツ人の母を持つ飲料会社の社長であり、朋子はそこでさまざまな新しい体験をするのです。中でも、ドイツ風に「ミーナ」と呼ばれる1歳年下の従妹である美奈子との思い出は、30年以上たった今でも色あせることのないかけがえのないものになったのでした・・。

芦屋の洋館、ハンサムな伯父、伯父の会社で作っているフレッシー、乳ボーロ、ベンツ、図書館、ベッドの下のマッチ箱、光線浴室。ミュンヘンオリンピックイスラエル選手団襲撃事件と、男子バレーの森田と猫田、ジャコビニ流星雨、クリスマス・・。そして、コビトカバの「ぽち子」! 小さな頃から身体が弱いミーナは、なんと、洋館で長年飼っているコビトカバに乗って、坂の上にある小学校へ通学しているのです。これが「ミーナの行進」という、タイトルの由来。でもミーナと朋子の行進は、どこに行き着くのでしょうか?

博士の愛した数式』で大ブレイクした小川洋子さんですが、本当にステキなストーリーテラーになりました。デティルの積み重ねによって描き出される、ミーナと朋子の世界が時のフィルターを通すことによって、大きな流れになっていきます。まるで、ジョン・アーヴィングの小説を読んでいるかのよう。^^

表紙に描かれた本が、洋館、天使、カバ、彗星、オリンピックと、ミーナと朋子のエピソードのひとつひとつを象徴しているのですが、1冊だけ、タイトルの見えない、赤い装丁の本が描かれています。重要なエピソードを暗示しているのですが、もちろん秘密。30年後の2人がどうなっているのか・・もちろんこれも秘密です。

2006/9