りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

風の影(カルロス・ルイス・サフォン)

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1945年のバルセロナというだけで、とってもミステリアス。スペイン内戦で最後まで抵抗し、陥落後、徹底的な弾圧を受けた街。

霧深い朝、10歳のダニエルは、父に連れて行ってもらった「忘れられた本の墓場」で、運命の本『風の影』に出会います。内戦中に謎の失踪を遂げた、作者フリアン・カラックスの過去を追うダニエルの前に姿を現したのは、内戦に傷ついた都市の記憶・・。

全ての真相が明らかになるのは、10年後。20歳になり、大富豪の娘・ベアとの身分違いの恋におちたダニエルは、30年前のフリアンと彼の恋人ペネロペを襲ったのと同じ運命が、自分たちに覆いかかろうとしていることに気づきます。フリアンはどうして、行方をくらませてしまったのか? フリアンの著作を、全て消滅させようとする謎の男の正体は? 内戦時代から続く憎悪に2人の愛は引き裂かれてしまうのか?

1冊の本を巡って数世代の人々の人生が展開されていきます。ひとりひとりの人生までしっかりと書き込まれたデティルからも、作者がバルセロナの人々に感じている愛情が伝わってきます。そして作者が「文学」に対して持っている熱い想いも・・。スペインの無名の作家によって書かれた本書が、口コミで広まり、37カ国で翻訳出版されるほどになったのも、うなずけます。

2006/9 北海道旅行中に