りぼんの読書ノート

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女帝 わが名は則天武后(シャン・サ)

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中国四千年の歴史上、皇帝の座に就いた唯一の女性である則天武后。後世の歴史家からは冷酷な悪女として貶められ、皇帝であったことすら否定されてきた女性という正史ん、中国出身の女性作家が挑みます。

平民生まれで、父を亡くし、何の後ろ盾もない少女が、拾われるように後宮に入り、才気と天運だけで、皇后に、そしてついには玉座に上る。広大な帝国の未来を委ねられた彼女は、幾度となく天に問いかける。「天よ、なぜこの私だったのか・・・」

作者のシャン・サ(山颯)さんは、北京生まれの34歳の女性。天安門事件後に17歳でフランスに渡ってからフランス語を学びはじめ、現在はフランス語でベストセラーを著すまでになっているんですね。まさに才女です。

シャン・サさんは、自作についてこう語っています。後宮のライバルの手足を切り落として酒壷に投げ入れたなどの逸話は、西大后にも漢の時代の皇后にもあり、いかにも後世の男性歴史化による、悪意ある創作だと。そして、武后の時代にシルクロードが開かれて西域経営が安定し、科挙による平民登用が開始されたという政治的成果に注目すべきだと。

歴史小説には珍しい一人称で書かれた、詩情に満ちた文体もいいですね。後世の歴史家に挑戦するような、ラストの一文も印象的です。「私は永遠という歯車を回す者の、謎に満ちた微笑である。」

2006/8