りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第3幕(雪村花菜)

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第1幕第2幕までは意識されていなかった本格的なシリーズ化は、本書の執筆時点では決まっていたのでしょう。これまでの「読み切り」作品と異なり、本巻の結末は「続編に続く」含みが持たされています。

不世出の軍人と誉れ高い関小玉が、とんでもない傍系から皇帝となったかつての相棒の文林の願いで皇后となってから2年。冷静で非情な外道ながら、小玉に対する愛情だけは一途な文林なのですが、女子力ゼロの小玉がそれを理解できないでいる状態に変わりはありません。後宮の人員整理の際に、文林に新たな出会いの機会を与えた小玉でしたが、誰にとっても意外なことに、文林はひとりの娘に目を止めることになります。

たちまち後宮は大荒れに荒れるのですが、実は文林には狙いがありました。その背景には玉座を狙う新たな陰謀があったのですが、形式主義な文官と無能な武官が、問題をこじらせてしまうんですね。かくして軍人としての本領を発揮する小玉でしたが、辺境での戦いで長年の大切な友人を失うことになろうとは・・。

前2作とは異なるスケールの、巨大な敵が現れてきそうです。小玉が「伝説」となるための死闘が開始されるのかもしれません。ただし「中国史と、後宮ものと、戦う女性が好き」という著者が「複雑極まりない思考の結晶」を綴るための「軽妙な語り口」は、変わらないでいて欲しいものです。

2017/11