りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第13幕(雪村花菜)

このシリーズも次巻で終了とのこと。本巻では年配者になりつつある元皇后小玉と皇帝文林の関係が、微妙に変化していく様子が描かれています。大宸帝国の後宮を揺るがした仙娥昭儀の懐妊事件は、文林の娘・令月の誕生と仙娥の自死で決着。冤罪で皇后を廃された小玉は、許されたものの皇后への復帰はならず、二段階低い九嬪の位に留め置かれています。文林からの深い信頼は変わってはいないのですが、ものには順序と機会が必要ということですね。

 

小玉と文林の関係は、既に一過性の恋を超えています。本巻の端々から見出せるのは「家族」の姿。小玉にには実子はいませんが、養母として育て上げた皇太子の鴻と、新たに得た帝姫・令月は、事実上彼女の子どもたち。時おり疲れや病を訴えるようになった文林も、かつての「人の心を理解できない」人非人状態からは成長し、次第に父親らしい側面を見せつつあるようです。皇帝の息子としてはもうひとり、小玉の命を狙って死罪を命じられながら生き延びた鳳がいるのですが、彼にも出番は巡ってくるのでしょうが。

 

今回はほとんど話題になっていませんでしたが、隣国の寛や康の政変や、庶人として生き抜いている廃后・李桃や、坏湖の族長に嫁がされた元充儀の雅媛らの動向も気になります。まだ回収されていない伏線も多い中、次巻で綺麗に物語の幕を引くことができるのかどうか、気になるところです。もっともメインストーリーに絡まないキャストの物語は、スピンオフとして別に書く手もありますね。

 

2022/9