りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第12幕(雪村花菜)

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架空の王朝「宸」の軍人皇后として、後に神格化される小玉の物語を軽妙に語る人気シリーズの第12作では、ひとつの物語に決着がつきました。

 

前巻で皇帝の落胤を孕んだ「悪女面の美女」仙娥の罠にはまり、小玉は皇后の地位を剥奪されてしまいました。冷宮という名の監獄に落とされて下働きの仕事を命じられますが、これは疾走し続けていた自分の人生を見つめ直す機会になったのかもしれません。もともと僻地の下層民出身である小玉にとっては、労働は苦痛ではないのです。

 

皇帝の文林は、小玉の信奉者である貴妃の真桂を頼って、悪あがきのような救出策をもちかけます。直接的にはほとんど役に立たなかったのですが、この動きは意外なところに波及していき、まったく予想もつかなかった人物から小玉は救出されるのでした。結局のところ仙娥は、母となることではじめて自分の意思で行動を起こすことができた、不幸な生い立ちと運命に弄ばれた女性にすぎなかったようです。

 

本巻では宸国の国際問題は進展しませんでした。寛と康を統一してその上に君臨しようとしている梨妃の陰謀や、実は生きていた寛国正妃と宸国の廃太子・鳳の物語や、蛮族の坏胡に嫁いだ薄雅媛に同行した衛夢華の謎めいた行動などは、次巻以降で動き出すことになるのでしょう。

 

2021/11