りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第6幕(雪村花菜)

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シリーズ第6巻ではついに隣国・康との戦が始まってしまうのですが、行軍元帥に選ばれたのは後に軍人皇后として名を挙げる小玉ではなく、無難な人選ともいえる班将軍でした。本巻では、班将軍の戦死によって、ついに小玉が国の運命を背負って戦場へと赴くことになるまでが描かれます。
 
とはいえ、本書の舞台となるのは大半が宮廷です。何より前巻の第5幕で微妙な関係になってしまった、皇帝文林と皇后小玉の間の溝が埋められなくてはなりませんね。さらに開戦を契機にして、朝廷では皇太子問題が議題にのぼり、反皇后一派の領袖の外孫である長男の鳳か、小玉を養母に持つ三男の鴻かの選択も行われようとしていました。

著者は後書きの中で、「無意識に心の周囲に殻を形成していた小玉が愛情を自覚するためには、とてつもない衝撃が必要であり、前巻の事件で殻だけでなく気持ちも割れてしまった」と書いています。しかし「殻が割れなければ、小玉の気持ちはその中で腐っていった」のであり、本書は必要であった再生のステップなのでしょう。次巻ではついに、全てを吹っ切って戦場で活躍する小玉の姿が描かれるのでしょうか。

ところで今までずっと、本書の舞台となっている「大宸国」とは中華の統一帝国ではないかと思い込んでいましたが、康や寛という複数の隣国と戦争を起こすとなると、中国の春秋戦国時代の列強国家のような存在なのかもしれません。もっとも「宸」はその後も空白時代を経ながらも長く続き、最後には立憲君主国へと変貌を遂げるとのことです。

2018/7