りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第8幕(雪村花菜)

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シリーズ第8作は、第1部を締めくくる巻になりました。軍人皇后として歴史に名を刻んだ関小玉は、2つの隣国との戦に大勝したものの、傷毒を悪化させて生死の境をさまよっています。もちろん主人公がここで亡くなるはずはありませんが、こういう際に脇役たちは活躍しなければなりませんね。

 

もと小玉の上官でありながらあった宦官軍人の賢忝は、寡兵をもって敵軍を追撃して完勝。しかし辺境の民の騎兵を借りたことで負い目を作ってしまいます。はたして妃を求めてきた胡王のもとに自ら赴いたのは、意外な人物でした。その後、辺境で活躍する女戦士の物語が大流行するといえば、もうわかってしまいますね。彼女と李真桂との女の友情は爽やかです。

 

第1巻から小玉に仕えていた女官長の劉梅花による、小玉を思うが故の企みが、臨まぬ結果を招いてしまった理由も明かされます。歪んで育ってしまった少年が嫡母の命を狙い、生母の命を利用するなどという行為は読み切れませんよね。自らの命を以て罪を償おうとした梅花は、最後まで務めを尽くすよう、皇帝から命じられます。その一方で、皇帝を裏切った司馬淑妃らの末路は、もちろん厳しいものでした。

 

こう書いていくと、皇帝・文林の影は薄いですね。小玉との関係が微妙に修復されきっていないので、そのあたりは第2部に続いていくのでしょう。著者は、この物語の舞台となっている国は衰退へと向かっており、その中で自らの役割をまっとうしていく人々の物語という側面が強くなっていくと言い切っています。第1部を書き上げる中で定まってきた著者の個性が、いっそう生かされる物語となっていきそうです。

 

2019/8