前作『蝶舞う館』では、ベトナム山岳少数民族の独立闘争を描いてくれた船戸さんですが、本書の舞台はミャンマーです。
ミャンマー東部山岳地帯で、200万ドルを摘んだヘリが墜落。そこは軍事政権の手は届かない、カレン独立軍の支配地域。アヘン取引に絡んでいるため表沙汰にできないお金を巡って、民族独立の悲願、中国系犯罪組織の裏ビジネス、政治犯の信条、さらには己の保身や、一攫千金の野望などが蠢き出します。
ビルマ民族によるミャンマー軍事政権が少数民族を弾圧し、一方では、海外からの民主化を求める声に敏感になっている。そんな実情がよく描かれていると思うのですが、どうでしょう。
例によって地域に永住しようとしている日本人も登場。今回は政治資金を持ち逃げしてミャンマーに高飛びし、地方で外国人専用ホテルを建設しようという設定。こんな人、出さないほうが、ストーリーに深みが出るのに・・。
2006/5