期待しないで読み始めた本が面白いと、嬉しいものです。「海洋冒険小説」というのは、最近はやらない分野ですよね。売れてるのは「ダーク・ピット」シリーズくらいでしょうか。
17世紀の7つの海は、海賊たちの天下。海賊船「アドヴェンチャー・ギャレー」を率いるモア船長は、アラビア海からインド洋、ジャワ海までを股にかけて大活躍。わりと本格的な海洋冒険小説です。
出資者を募って海賊退治に乗り出したのに成果があがらず、巨額の借金を背負い込むのが嫌で、自ら海賊になってしまうなんて、実際にもこんな話はあったのかもしれません。モア船長は、悪事はなしても非道はせず、船員たちからも慕われ、東インド会社の総督とも懇意になり、誘拐したムガール帝国皇帝の孫娘から慕われてしまいますが、さすがにそんな海賊はいなかったでしょうね。
海賊をヒーローにする為の、手っ取り早い方法は、もっと悪どい海賊をやっつけさせること。宿命のライバルとして「タイタン」のブラッドレー船長が登場。こいつがどんなに悪い奴で、モア船長とどんな因縁があって、一度はこてんぱんにやられたモア船長が、どうリベンジするか。このあたりが本書のハイライト。楽しく読めましたよ。
2006/5