りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

素数の音楽(マーカス・デュ・ソートイ)

イメージ 1

1とその数自身以外では割り切れないのが「素数」。小学校の算数でも習った「素数」が、天才数学者たちを魅了し、一方では悩ませ続けているというから、驚きです。

どの数字が素数なのかを、確認する「公式」が全く謎なんですね。ある数字の範囲にいくつの素数があるのかを示すのが「21世紀最後の謎」と言われる「リーマン予想」ですが、宇宙に存在する原子の数を超える数を超えてチェックしても、素数の秘密は、謎のまま残されているのです。

どうして素数の数を予測するのに円周率πや虚数が必要とされるのか。どうして「ゼロ点(説明はできません)」の間隔をグラフ化すると、量子の振動や遺伝子構造と重なり合うパターンができるのか。それはまるで、宇宙が人類に授けた音楽のような調和を見せるのです。

本書は「リーマン予想」に惹かれて、数論の深遠をさまよった、天才数学者たちの列伝です。理論も少々は説明されていますけどね。「最終定理」のフェルマーや「近代数学の父」ガウスを前史として、「大数学者」ヒルベルト、「数学の秘義を授かった」ラマヌジャン、「数学界の貴族」ボンビエリ、「魔法使い」エルデシュなどが、「リーマン予想」の証明に死力を尽くします。

中でも興味深かったのは、ボンベイの事務員だったラマヌジャン。彼は「ヒンズーの女神に導かれ」て、独学で近代数学を身につけ、奇想天外な数式を次々に生み出したそうです。

コンピューターがどれだけ発達しても、数式の正しさは証明できない。逆に、紙と鉛筆さえあれば、奥義を究めることも可能なのが数学。高校の頃にこんな本と出合っていたら、理系に進んだかもしれないな。

素数論が、インターネットのセキュリティを守っているそうです。正しく言うと、巨大な数の因数分解の困難さがキーになっているんですね。「リーマン予想」が解けると、ネット文化は崩壊しちゃうのかも・・。

2006/5