りぼんの読書ノート

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クランベリー・クイーン(キャスリーン・デマーコ)

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ニューヨークの有名なネット企業でマネージャーを務めているダイアナですが、私生活はさんざんで、3年前の失恋を未だに引きずっている状態。そんな彼女が交通事故で両親と兄を一気に失ってしまい、喪失感の深淵に沈んでしまいます。

友人たちの親切心も受け入れられず、仕事も辞めて、車でふらっと旅に出た矢先に、ニュージャージーの田舎道でバイクに乗った老女ロージーをはねてしまうのですが、幸いロージーは無事で、なぜかダイアナはロージーと彼女の孫ルイーザの家に滞在することになるのです。そこはニューヨークの近くであるにもかかわらず、美しいクランベリー畑が広がる幻想的な世界でした。

かつてクランベリー・クイーンだったというルイーザは、ダイアナとは同年代のシャキシャキ娘。家族を失ったことを打ち明けられずにいるダイアナに対して、無神経なほど傍若無人にふるまうのですが、逆にそれが良かったようですね。全く新しい人間関係の中で、気遣いなどされずに生活を営むことが、ダイアナの再生に繋がっていったのですから。収穫期を迎えたクランベリー畑の美しさにも、癒し効果があったに違いありません。

訳者の大野晶子さんは本書について、「出会い、現代の桃源郷の発見、新しいコミュニティへの参加、友情、承認、ほのかなロマンス、愛の予感、繋がりへの希求などの癒しの秘密の数々が、宝探しのように隠されている」と評しています。時にはダイアナを突き放すかのような、ユーモアを交えた語り口も、本書のテーマにぴったりはまっていました。

2018/5