りぼんの読書ノート

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南風吹く(森谷明子)

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子規を輩出した松山市で開催されている「俳句甲子園」を舞台とする春や春の続編です。とはいっても、登場メンバーは入れ替わります。前作の主人公が東京の女子高校生チームだったのに対し、本書で描かれるのは愛媛県の離れ小島の高校生たち。

ミカン農家の娘でクラス委員の日向子から、漁師の息子で優等生の恵一を俳句甲子園に誘って欲しいと頼まれたのは、和菓子屋の一人息子でバスケ男子の航太。自分の句に勝手な採点などして欲しくないという恵一も、本人も気づかなかった新しい解釈の楽しさを知って仲間に加わります。さらに神社神官の息子・和彦と、なぜか松山の家族を離れて離島の祖父と同居している京が加わって、あと1人。そうなったら当然、航太も入らないわけにはいきません。

前作でもそうだったのですが、「俳句甲子園」はメンバー集めが大変そうです。誰でも作れそうな俳句ですが、その分奥が深い。それを鑑賞し、解釈し、解説していくというのは、やはり敷居が高いのです。その分、いったん嵌まり込むと永く楽しめそうなのですが。

本書では、過疎化しつつある離島の問題をはじめ、自身の進路や親兄弟との確執など、それぞれが抱える悩みも描かれます。そしてそれは俳句にも反映されていくのです。俳句という詩型で自分の世界をどう表現するのかが問われるわけですね。俳句の魅力を伝えることに多くの行数を割かざるを得なかった前作よりも、内容は濃くなったようです。俳句の世界が広がっていくことを願う、著者の気持ちもストレートに伝わってきます。

ところで離島の高校生たちが出場した大会は、前作と同じだったのですね。直接対戦こそなかったものの、東京の藤が丘高校が3位に入賞していましたし、理香の「遁走曲」の句も登場。真名と夏樹もラスト近くでチラッと登場しています。

2018/4