りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ひゃっか!(今村翔吾)

俳句甲子園」や「書道甲子園」は知っていましたが、「華道甲子園」と呼ばれる「全国高校生花いけバトル」なる全国大会があることは知りませんでした。華道やフラワーアレンジメント部員でなくても2人1組で参加でき、当日決定される花と器を用いて5分間の即興で花を生け、対戦チームと優劣を競う競技だそうです。全国大会は栗林公園のある高松市で毎年開催されているとのこと。

 

主人公は花を愛する高校2年生の大塚春乃。祖母の住む香川での決勝大会を目指していたものの、彼女の高校の華道同好会の部員は彼女ただひとり。部活への昇格はおろか、大会への出場申し込みすらできない状態。そんな中、大衆演劇の役者で生け花の経験もあるという山城貴音が転校してきたことで、物語が動き始めます。転校が多くて勉強が遅れている彼の家庭教師をすることと引き換えに、一緒に大会に出るという約束を交わすことができたのです。

 

「花いけバトル」の採点対象は、作品の優劣のみならず、制作過程のパフォーマンスも加えた総合点というのがポイントですね。しかも採点者は当日会場に来た観客であり、全くの素人も多いのです。純粋に花と向き合う春乃と、大衆演劇役者で舞台で映える貴音のコンビは、かなりのもの。もちろんライバルは数多く、中でも頂点に立っているのは、香月院流家元嫡男である丸小路秋臣というプリンス。さまざまな困難を乗り越えなくてははらない春乃たちに勝算はあるのでしょうか。

 

キラキラの青春小説ですが、著者はまさかの今村翔吾。『塞王の楯』で直木賞を受賞した時代小説作家なのですから驚きます。著者唯一の現代ものですが、根底に流れる時代小説との共通点は「挑戦者の心意気」とでもいうものでしょうか。

 

2023/11