りぼんの読書ノート

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紅霞後宮物語 第0幕1(雪村花菜)

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稀代の天才と呼ばれた女性軍人でありながら30代にして突如皇后となり、帝国に中興期をもたらして後に神格化された関小玉の活躍は、本編で綴られています。本書は彼女の伝説の始まりを記した「第0幕」なのですが、こちらも長く続きそうです。

彼女が軍に入隊したのは、足が不自由なのに徴兵された兄の身代わりになったためと伝えられています。しかしその背景には、15歳の時に一方的に縁談を破棄されて村で「傷物扱い」されていたことや、ボケ老人からのアドバイスがあったのですね。超ど田舎の貧農暮らしながら、肝っ玉度の高い母親や、妹思いの兄や、親友となった兄嫁に囲まれていた日々は、小玉にとって貴重な時代でした。

軍に入った当初は何の役にも立たない小娘なので、配属先は後宮の警備部隊。まさか後にそこの主人となるとは思わなかったはずですが、一番無難と思われていた後宮で起きた事件の際に手柄を立てて注目され、まさかの前線配備。しかも上官である軍人宦官の沈中郎将に初恋をしてしまうのですから、ややこしい。もちろん気遣われながらもあっさりと振り払われるのですが、沈中郎将は本編にも登場してくる人物ですね。

他にも最初の上官であった柳隊正や、ややこしい同僚の叔安などからも評価され、前線では軍略の才能の片鱗を見せたりもするのですが、将来の夫となる文林はまだ未登場。小玉の性格のように歯切れ良くさっぱりした文体で、テンポよく綴られる展開は楽しく、続編が待ち遠しくなりますね。まだ妹キャラの小玉が、どの時点で姉キャラに変身するのかも楽しみです。

2018/2