セックスレスの夫婦関係に悩む妻を主人公にした、「フランス文学風」のお洒落な作品です。
３０歳になった初美は結婚３年目で、５歳年上の夫に愛されて幸せな結婚生活をおくっています。しかし彼女には大きな不満があったのです。そろそろ子供も欲しいのに、雑誌の編集者として残業続きの夫は家では疲れ果て、なかなか「その気」になってくれないのです。夫とのセックスレス日数が記録を更新し続ける中で、ついに初美の妄想は臨界点に達してしまいます。
偶然再会した同級生に欲望を感じたり、義弟に誘いをかけたくなったり、向かいのマンションからのぞいていた予備校生に挑発的なポーズを見せたり、あげくの果ては乳房を触診する女医にまでムラムラしてしまう始末。「幸せな夫婦生活を守るためには、別の性欲のはけ口が必要」とまで思い込んでしまうのですが、たかがセックスで生活の全部を捨ててしまって良いのでしょうか。
夫婦として大切にいたわり合うほどエロさからは遠ざかっていくという逆説的な風潮を、コミカルに描いた作品です。夫婦関係の真髄は一緒の時を重ねることにあるのですが、スパイスも必要なのでしょう。かなりチャレンジングなテーマですが、セックスレス夫婦がたどり着いた境地には、同感する読者も多いように思えます。
2017/12
