「うそまこと ようかいひゃくものがたり」と読みます。著者自身をはじめとして、妖怪に関する大先生の水木しげる、大御所の荒俣宏、専門誌『怪』の執筆陣・編集陣である平山夢明、加門七海、黒史郎、多田克己、村上健司、郡司聡らが「とても良く似たキャラ」で登場する「フィクション」です。
冒頭に登場するのは荒俣宏の傑作『帝都物語』に登場する魔人・加藤保憲らしき人物。シリアの砂漠で復活を遂げた魔人は、何を目論んでいるのでしょう。それに呼応するように、遥か彼方の日本では、水木しげる大先生が「妖怪や目に見えないモノがニッポンから消えている!」と叫び出します。
しかし大先生の言葉に反するかのように、日本国中に妖怪が氾濫し始めるのです。村上健司が信州の廃村で発見した「呼ぶ子石」、多田克己が浅草で見かけた「一つ目小僧」、黒史郎に憑りついた「しょうけら」。そしてついに「朧車」が新幹線を停めるという事件が起こり、妖怪の存在は隠しきれない「事実」となっていきます。
著者の作品らしく、このあたりの展開は饒舌にすぎ、薀蓄は乱れ飛び、物語の進行の遅いこと、遅いこと。まるまる一冊を費やして、「呼ぶ子」の「アシキモノガ、オバケヲホロボス」というお告げに至るのですから、ほとんど水木しげる大先生の冒頭の叫びに戻っただけという感じです。この「過程」を楽しめなければ、本書は読めませんね。
2017/6