りぼんの読書ノート

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虚実妖怪百物語 破(京極夏彦)

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三部作の第2巻です。第1巻 序の冒頭でシリアの遺跡に登場した魔人・加藤保憲が、富士の樹海に再登場。どうやら彼は、憎きニッポンを滅ぼすために中東の太古の魔物を召喚したようです。その魔物は、都知事や与党幹事長の肉体を借りて、使命を果たそうとするのです。

では何をどうするのでしょう。政治家の姿を借りた魔物は、日本各地に出現した妖怪を諸悪の根源と決めつけて、駆逐に乗り出します。その結果、世相は殺伐とし、民衆は暴力的になり、相互監視が始まり、日本から「余裕」が消え去ってしまうんですね。

何の役にも立たず、試験も何にもない妖怪たちは、「人々の余裕」がなければ生きていけません。どうやら妖怪の出没は最後の抵抗だったようです。やがて世間の糾弾は妖怪研究家たちにも及び、密かに「呼ぶ子石」の研究を続けていた大御所の荒俣宏の施設が、暴徒たちに包囲されるという事態にエスカレート。

ここからの脱出劇が第2巻のハイライトですね。荒俣宏のコレクションにあった昭和初期の筆記ロボット「學天即」が「付喪神」となって、モビルスーツ化するという大技が炸裂。さっそうと「學天即」に乗り込んで正面突破をはかる荒俣宏と、後からついていく百鬼夜行行列! しかしこれは「多くの人にそう見える」だけであり、実際は荒俣宏が悠然と歩いているだけというのだから、やはり滑稽。

第三巻ではついに、富士の裾野の別荘地に隠遁した妖怪関係者たちと、魔人との間に「妖怪大戦争」が始まるのでしょう。たぶん・・。

2017/6