りぼんの読書ノート

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こちら、郵政省特別配達課 2(小川一水)

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民間の宅配業者に対抗するために、郵政省内に設立された特別配達課。第1巻では、国家予算を無駄に使った巨大装備と、官僚機構の頂点から与えられた特別権限を用いての、縦横無尽の活躍が描かれましたが、第2巻になって様相が変わってきます。

実は郵政省の真の目的は、全国の地下深奥部にコンピュータ制御の郵便用リニアを走らせて、大幅な時間削減と人員削減を進めることだったのです。派手な立ち回りを見せる特別配達課は、リニアを準備する間の人気取りと時間稼ぎであり、もちろん将来は不要になる運命。陰謀を知った桜田美鳥と八橋鳳一は、特別配達課の存続を賭けて反撃に出るのですが・・。

本書が書かれた2001年の時点では、郵政民営化の行方は決まっていません。特別配達課の巨大装備や、郵便リニア網計画、さらには「首都を運ぶための移転計画」などと聞くと、「国営事業による予算の無駄遣い」という言葉が浮かんでしまうのですが、著者は相当楽しんで書いているようです。峠のカーチェイス、京都の特殊な住居表示の謎、厳冬の日本アルプスでの救援作業まで、「配達」というジャンルで括ってしまうのですから。物語の決着は「大岡越前的」ののですが・・。

2014年に文庫化された際に書き加えられた「暁のリエゾン」は、第1巻と第2巻の間に東日本大震災があったという設定の短編です。あの時・あの場所に特別配達課の八橋と桜田がいたら、どんな「配達活動」をしていただろうかという物語。

2016/12