りぼんの読書ノート

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妖星伝 7 魔道の巻(半村良)

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シリーズ第6巻 人道の巻から13年後に刊行された、シリーズを締めくくる第7巻については、評価が分かれるところでしょう。すでに第5巻 天道の巻までで鬼道衆と外道皇帝の物語は終結しており、宇宙的意義を失ったあとの人間の生き方をお幾と栗山定十郎の人情話として示した『第6巻』自体が、「長い後日談」のような位置づけだったからです。

本書の内容を一言で表すなら「ボーマンになった日円」とでもいうところでしょうか。霊的存在となった鬼道衆による宇宙船・黄金丸に生命ある者として乗り込み、外道皇帝とともにポータラカへと旅をした僧侶は、まるで『2001年宇宙の旅』のデビッド・ボーマンのようなのです。

とはいえ日円と青円が、仏教用語を用いながら深宇宙の神秘を理解しようとしていく、本書の大半を占める部分は全くの蛇足でしょう。人類を超越した存在となって地球へと帰還した2人が、過去と未来を概括しながら時間論を展開する部分も成功していないようです。

結局のところ本書における新しい展開は、2点のみではないでしょうか。ひとつは、意志を持つ時間が発生した宇宙次元は消滅させねばならないこと。もうひとつは「生命が生命を喰らい合う妖星=地球」が輪廻を脱して救われるには人類が滅亡しなくてはならないということ。ただし後者に関しては、超能力者へと進化を遂げて霊的存在に近づくという方法もあるようです。そもそも消滅させられる宇宙次元で、何をどこまで頑張ればよいのかという問題はあるのですが・・。

私の評価では、第7巻は「全くの蛇足ではないけれど、読んでも読まなくても良い」という程度の位置づけです。

2016/7再読