りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

カクテル・ウェイトレス(ジェームズ・M・ケイン)

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郵便配達は二度ベルを鳴らすの著者の、最晩年の遺作だそうです。

主人公は、交通事故でDV夫を亡くしたばかりで、幼い息子を抱えて生活のあてもない若き未亡人ジョーン。少々怪しげなバーでカクテル・ウェイトレスとして働き出したところ、そこで初老の富豪に見初められてしまいます。一方、若くてハンサムだが貧しい男性からも言い寄られたジョーンは、どのようにして自分の人生を切り開いていくのでしょうか。

ジョーンに一人称で語らせたことが、本書の価値を上げたようです。彼女の周囲で何人もの死者が出てくる中で、一貫して「世間知らずの無垢な女性」という姿勢を崩していないジョーンは、もちろん「信用ならざる語り手」なのですから。まるで「ポストモダン文学」の趣すら感じます。

そして、すべてを乗り切ったはずのジョーンに対して、「天罰」ともいうべき薬害を予想させる結末は、見事というしかありません。本書もやはり「イヤミス」なのですね。

2016/5