りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

武蔵2(花村萬月)

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年長の友人・然茂ノ介と共に、山賊退治に向かった弁之助でしたが、彼らは「里人とは別のルールで生きる山の民(山落)」でした。弁之助らは、義父の武二とも知り合いという山落の仲間のようになってしまいます。鍛冶や猟を生業とする山落たちはいずれも凄腕の使い手であり、得意技も鎖鎌、槍、手裏剣、居合と多彩。30人抜きを挑んだ弁之助でしたが、あえなく7人目で敗退。

「あえかとでもいうべきものが欠けている」と首領から指摘されて画を学んだ弁之助は、義父から、生母の叔父にあたる道林坊という住職の教えを受けるよう促されます。この陪堂坊主が不思議なキャラなのです。かつては極悪人だったとも言われるものの、現在は飄々とした存在。話し方は「裸の大将」のようなのに、言葉には凄味がある。吉川英治版の「沢庵和尚」にあたるのは、道林坊ということですね。

弁之助とともに京に向かった道林坊の言葉に、多少の説教臭さを感じるようになったあたりで、ついに佐々木小次郎が登場。ほとんどすれ違っただけのようなものですが、道林坊に魅かれた小次郎は、弁之助に嫉妬を覚えます。それにしても、花村版の佐々木小次郎は、軽そうです。

まだ13歳ですが、相変わらず弁之助はモテまくっています。なんとなく『ぢんぢんぢん』のイクオとかぶってきたようにも思えます。そういえばこの著者において、「生と性」は「死と暴力」とも地続きでした。道林坊の「殺せば生が見える。番えば死が見える」との言葉もまた、難解です。

2015/3