りぼんの読書ノート

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2011/12 巨人たちの落日(ケン・フォレット)

大震災・津波被害・原発事故が起きた今年を締めくくる一冊としては、3位にあげた『神様2011』がふさわしいように思えます。「震災以降の日本文学」は書き手と読み手の双方の大きな課題ですが、本格的に小説化されていくのは来年以降になるのでしょう。
1.巨人たちの落日(ケン・フォレット)
巨匠ケン・フォレットの描く、20世紀をテーマにした「百年3部作」の第1作は、欧米各国に跨がる5家族・8人の主人公を中心に、第一次世界大戦ロシア革命を縦糸とし、冒険や恋愛や家族関係を横糸とした大河ドラマです。落日を迎えるのは、ドイツとロシアの帝政やイギリスの貴族政という、戦前の欧州の支配者たちです。

2.獅子頭(シーズトォ)楊逸
ハルビンに生まれて来日した著者の「日本に来て22年たっても完璧な日本人の価値観にはならない」との思いが込められた作品です。中国から日本に帰化して女性たちに翻弄され、日本語に苦労し、悩み続けているダメ男の物語の背景には「中国3千年の食文化の歴史」があるのですが、日本人のそんな言い方自体が、中国人には笑われてしまうそうです。^^;

3.神様2011(川上弘美)
1993年のデビュー作と、原発事故を受けてのリメイク版が併録されています。「最終的には自分自身に向かってくる静かな怒りが去りません」と言う著者の、「それでもわたしたちはこの生を放り出すことをしたくないのです」との思いを強く感じる作品です。デビュー作と比べて叙情性が欠けるのは仕方ありませんね。



2011/12/28