りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2005/1 わたしの名は紅(オルハン・パムク)

トルコを代表する作家・オルハン・パムクが描く、東洋と西洋の出会い。こんなに水準が高くて、こんなにおもしろい小説はめったにない!年の始めから今年のイチオシ作品に出会いました。
1.わたしの名は紅 (オルハン・パムク)
ルネッサンス絵画に出合った、イスタンブール細密画家たちの動揺。芸術の永遠性と、写実と独創性の意味があらためて問い直されます。物語のヒロイン、シェキュレは最後に述懐します。「自分の肖像画を永遠に遺したい」という望みはかなわないと。細密画家には、わたしに似せた肖像画は描けないし、西洋の名人たちには、時を止められないから・・。

2.君はこの国を好きか (鷺沢萌)
韓国人とのクォーターである著者が、日本と祖国に感じる素直なとまどい。韓国に留学してハングルを学び始めた雅美は「祖国」にもとまどいを感じてしまいます。「君はこの国を好きか?」とは、最後に彼女が問われること。ショックやとまどいを乗り越えてきた雅美は、どう答えたのでしょう。そして私たちは、この問いにどう答えられるのでしょうか。

3.からくりからくさ (梨木香歩)
不思議な人形「りかさん」を中心に、「手仕事」に携わる若い女性4人が同居する共同体は、まさに「結界」。洋の東西を問わず機織りは女性の手仕事であり、彼女たちは、連綿と続く無名の女性たちの歴史を現代に引き継いでいるのでしょう。作者は、「女性によって継続される日常の連続」こそが「人生の意味」と、静かに語っているかのようです。



2005/2/2