りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2005/2 停電の夜に(ジュンパ・ラヒリ)

村上春樹さんを久しぶりに読み返してみました。彼の小説の凄さは、その後、彼の後継者としてぞくぞく登場した「純愛作家たち」と比べてみて、理解できるものかもしれません。
1.停電の夜に (ジュンパ・ラヒリ)
『その名にちなんで』の作者のデビュー作である短編小説集。「停電の夜に」は、妻の流産によって関係が微妙になった、若夫婦の物語。停電の夜に秘密を打ち明けあい、親密な関係を取り戻すかに見えたのに、妻は最後に意外なことを打ち明けるのです。それに対して夫が漏らしてしまう残酷な一言。言葉は怖いな。「言葉の怖さ」とは、移民としての鋭い感覚なのでしょう。

2.ローマ人の物語13 (塩野七生)
毎年1巻ずつ、15巻まで刊行される、塩野七生さん渾身の大シリーズ。15年先なんて気の遠くなるほど未来に思えたのに、ついに13巻。この巻のテーマを一言で要約するなら、「なぜローマは中世化したのか?」。ローマを分割し延命させた、ディオクレチアヌスとコンスタンティヌスに、塩野さんは「延命させる価値があったろうか?」と問いかけます。生き延びたローマは、すでに、かつての「世界市民」を生み出した、魅力あふれるパクス・ロマ-ナではなかったのです・・。

3.ノルウェイの森 (村上春樹)
10年ぶりくらいに読んでみました。人を傷つけることも傷つけられることも怖れ、深い係わりを避けながら、結果的に傷つき傷つけてしまう「優しい」男性。この作品、色々言われ続けていますが、私は好きなのです。主人公のキャラも嫌いではありません。今読み返すと、現在流行の純愛路線とは一味違いますね。




2005/3/5