りぼんの読書ノート

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天涯の船(玉岡かおる)

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大河ドラマの風格漂う小説です。明治17年。旧姫路藩家老の姫君の身代わりとして米国へ留学した下働きの少女ミサオが、オーストリア子爵家の血を引く青年マックスに求婚され、やはり留学中に知り合った日本の青年実業家・光次郎に心惹かれながらも、欧州へと嫁いでいきます。

ミサオは夫を早くに亡くしたものの子爵夫人の地位を守って息子を育て抜き、光次郎は造船会社の社長として実業と絵画コレクションで名をあげながらも、時代は戦争へと突入していく・・。叶うべくもない2人の純愛はどうなるのでしょう。

神戸の女性の物語を書き続けている玉岡さんですが、ミサオのモデルになっているのは「クーデンホーフ・ミツコ」です。あれっ、ミツコは東京生まれじゃなかったでしょうか? 光次郎のモデルは薩摩人の「松方幸次郎」で、これも神戸じゃない・・と不審に思いましたが、もちろん神戸は関係しています。光次郎が社長を務めた会社が神戸の「川崎造船」でした。

もともとは松方幸次郎の妻の好子が、神戸と深い関わりがあった九鬼家のお嬢様で、アメリカ留学経験があったということから、著者はこの物語の着想を得たようです。さらに「松方コレクション」の蒐集に際して、欧州美術界に詳しい女性に手助けさせ、それが「ミツコ」だったら物語が膨らむ・・と、発想が発展していったのでしょう。

明治期に女性がアメリカ留学するだけでもドラマなのに「実は平民」で、お付きの乳母からも虐げられるという「シンデレラぶり」が、たまらない設定。異郷で苦楽をともにした女子留学生仲間の親友が、生涯の純愛を貫いた運命の人・光次郎と結ばれて良妻賢母ぶりを発揮しているという皮肉な運命も、激しく好みでございます。^^

名家の妻となって苦労しながらも、やがて名家を一身に背負うまでに成長し、戦争と革命という激動の嵐に、毅然として立ち向かうあたりは惚れ惚れしちゃう! 終盤の「ハーレクイン状態」にはちょっと辟易してしまいましたが・・。

でも、ちょっと待て。これってラストを除けば「篤姫」そっくりの展開。本書は2003年に出版されていますから「篤姫」のほうがパクリと言えますが、大河ドラマ化されるのはもう無理ですね。^^;

2009/6