りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

犬博物館の外で(ジョナサン・キャロル)

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月の骨から始まる、一連の「キャロル・ワールド」の第4作です。

サンタ・バーバラに住むハリー・ラドクリフは、とっても嫌味な天才建築家。傲岸不遜な自信家で、クレアとファニーという2人の女性とつきあっている。そんな彼に訪れた転機は、中東のオイルダラー国の国家首長からの、「犬博物館」を作って欲しいとの奇妙な依頼。中東では犬は忌み嫌われているのですが。

最初は乗り気ではなかったけれど、ロス大地震の際に首長自らの手で命を救われ、引き受けることにしたものの、今度は内戦で首長が暗殺されてしまう。依頼を引き継いだ首長の息子からは意外な申し出。「報酬は魔法で払う!」。例によって、いつの間にか奇妙な世界に入り込んでいることに後から気づかされます。

ハリーは以前、精神の変調をきたした時に「キャロル・ワールド」では御馴染みのシャーマンのヴェナスクから治療を受けているのですが、既に死んでしまったはずのヴェナスクが姿を変えて現れ、ハリーにアドバイスを与えます。そうそう、ハリーは、ヴェナスクの愛犬だったビッグ・トップを受け継いでいたのでした。

ハリーが作ることになった「犬博物館」とはいったい何なのか。ハリーがウィーンで知り合った梯子と門を作る友人と、飛行機の中で声をかけてきた「魔法の代償」と名乗る男はいったい何ものなのか。そして中東の小国で起きた内戦とは、何を意味しているのか。

まさか、こんな話にまで広がるとは、完全に想像を超えていました。「バベルの塔の伝説」とは、神が傲慢な人間を罰した物語ではなく、神に与えられた人間がより完全な存在になるためのチャンスをものにできなかった話だったとは・・。

2009/3