りぼんの読書ノート

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木でできた海(ジョナサン・キャロル)

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ニューヨークの郊外にある「クレインズ・ヴュー」という小さな町を舞台にした三部作の最終巻。今回の主人公は、前2作にも登場していた元不良少年の警察署長フラニー。

目の前で死んだ三本足の犬を埋葬して以来、彼の周囲で不思議な出来事が相継ぎます。埋葬しても戻ってくる犬の死体。美しい羽だけを残して煙のように家から消え失せた夫婦。変死した女学生がスケッチしていた三本足の犬と彼女のスカートについていた美しい羽。そして、30年前の悪ガキだった頃の自分が目の前に登場するに至って、混迷は極大化。

ここまでいきなり世界を無茶苦茶にしてしまっていいのでしょうか。キャロルのイメージは、ごく普通の生活がちょっとずつ狂い始めたその先で、突然世界がひっくり返るというものなのに、今回は冒頭から不思議ワールド全開なんですから。

でも、ご心配なさらないでください。この程度の不思議はイントロダクションにすぎない程度の、ぶっ飛んだ世界が待ち受けていますから。ネタバレは書きませんが「神の目覚め」とだけ記しておきましょうか。

ラストはキャロル風に決まりますが、「木でできた海でどうやってボートを漕ぐのか?」とのキーワードの処理は少々消化不良だったように思います。またせっかくの三部作ですから、他の2作品との関係をもっと描きこんでくれた方が、理解しやすかったかなぁ。

2009/7