りぼんの読書ノート

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いのちのパレード(恩田陸)

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1959年から63年にかけて18巻発刊されたという早川書房の『異色作家短篇集』。「あの黒い表紙、強烈な帯コピー、シンプルかつ洗練されたデザイン。手に取った時の、嬉しいような怖いようなおののきを今でも覚えている」と語る恩田さんには、そのように「無国籍で不思議な短編集を作りたい」との思いがあったそうです。

恩田さんにオマージュを捧げられたオリジナルの叢書については全く知らないのですが、たぶん、狙いは成功しているのでしょう。収録された15の短編はどれも異様で奇妙で幻想的で、作家のイマジネーションを感じますから。『空中スキップ(ジュディ・バドニッツ)』や『燃えるスカートの少女(エイミー・ベンダー)』と共通する雰囲気がありますね。

恩田さんの短編は少なく、短編作家という印象はないのですが、時折エンディングで破綻をきたすことのある長編よりも、向いているのかもしれません(笑)。15の短編のテーマを紹介しておきます。

観光旅行: 巨人の手が生えてくるという伝説の村が観光客を誘致する理由
スペインの苔: 壊れたロボットは少女の悲劇の象徴。では、スペインの苔は?
蝶遣いと春、そして夏: 良き蝶使いになるための、4番目の条件とは?
: 日本を東西に分割する橋をガードする市民たちの「日常」
蛇と虹: おぼろげな記憶について語り合う姉妹の正体は?
夕飯は七時: 聞き慣れない言葉の想像を物体化してしまう子どもたち
隙間: 私はなぜ、隙間が怖いのか?
当籤者: ロト7とは、当籤者を殺すゲームだった・・
かたつむり注意報: 巨大なかたつむりが徘徊する夜の町の湿った圧迫感
あなたの善良なる教え子より: 先生に教わった「正義」の実践者からの手紙
エンドマークまでご一緒に: この世界はファンタジーミュージカル!
走り続けよ、ひとすじの煙となるまで: 軌道を走り続ける物体の中で営まれた歴史
SUGOROKU: 運命を左右する双六での、「あがり」の報酬は?
いのちのパレード: 地球上の死に絶えた生き物が延々と続ける行進。観察者は誰?
夜想曲: 「創作の源泉」もいうべき存在が見出した、次の憑依先は?

私の好みは「スペインの苔」と「夕飯は七時」です。

2008/7