りぼんの読書ノート

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ペット・サウンズ(ジム・フジーリ)

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ニュージャージーの寂れた街で生まれ育った著者にとって、ディズニーランドに象徴されるカリフォルニアは、まるで夢の国のように思えたあこがれの場所でした。ビートルズ旋風がアメリカに上陸した頃、「青い海、ビキニの娘、サーフィン」などをテーマにして、明るいロックンロールを歌っていたビーチ・ボーイズというバンドにも、少年は憧れていたのです。「ペット・サウンズ」というアルバムを聞くまでは・・。

「君だけじゃないんだよ」、「自分がどこか間違った場所にいる」、「答えがあることはわかっている」、「未来なんか誰にもわかりやしない」・・との否定的なイメージの歌詞やタイトルが並び、「パラダイスなんかどこにもありやしない」と歌っているかのような、このアルバムを指して「哀しみについての幸福な歌の集まり」と評した人がいます。

事実、ビーチ・ボーイズを代表する存在で、このアルバムをほとんど一人でプロデュースしたブライアン・ウィルソンは、その後、麻薬、引きこもり、離婚、肥満・・と、精神的な要因に起因した数々の問題に直面していますし、この時期にもその兆候は一部顕れてもいるようです。

本書を訳した村上春樹さんは、こう言っています。ビートルズの「サージェント・ペパーズ」は聴いた瞬間に、衝撃的なものと理解できた。その前に出された「ペット・サウンズ」には、それほどのインパクトを感じなかったが、前者の衝撃は時代とともに風化しているように思えるのに対して、後者はますます輝きを増しているように思える・・と。

私もこの本を読むまで、このアルバムのことを知らなかった1人です。さっそく「YOU TUBE」で一部を聴いてみましたが、メロディラインの綺麗な曲が揃っています。確かに「澄み切った悲しさ」を感じますね。相当に先入観を持って聴いてしまったのですが・・。また、この中の一曲、「God Only Knows」は、映画「Love Actually」で使われていたんですね。あの、空港の場面です。

クリックすると聴けます。
「God Only Knows」
「Wouldn't It Be Nice」


2008/6