りぼんの読書ノート

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クレイジー・リッチ・アジアンズ(ケビン・クワン)

貧しい中国系移民の娘ながら、ニューヨーク大学の経済学教授となった29才のレイチェル・チューは、シンガポール出身の同僚ニック・ヤングと恋愛中。彼が幼馴染の親友コリン・クーの結婚式で付添人を務めることになって、一緒にシンガポールで楽しい夏休みを過ごすことにしたのです。ニックは家族の前でレイチェルにプロポーズする決意を固めていたのですが、彼には秘密があったのです。それは彼の一族が清朝とも繋がる名家であり、世界有数の大富豪だということ。

 

ある階級に属する人びとにとって「結婚したい男性ナンバーワン」のニックが、中国系とはいえアメリカ人の娘を連れて里帰りするとのニュースはたちまちのうちに広まりました。ニックの母や親族からは目当ての女と思われ、元カノや社交界のセレブ女子からは嫉妬まみれの攻撃を受けたレイチェルは、真相を知ってビビリまくります。それでもニックの固い決意と変わらぬ優しさになだめられ、身分を越えた2人の愛は成就するかと思われたのですが・・。

 

「神様よりも裕福」と言われるクレイジー・リッチな華僑たちの生活は、平民の想像をはるかに超えています。アジア各国の王族や元王族との交友関係、世界中に保有する高級不動産、値段もつかない東西の美術品蒐集や自家用ジェット、さらには国家政策にまで影響力を有するというのですから。ちなみにニックの親友コリンの結婚式費用は4千万ドルとのと。シンガポールは階級社会ではないはずなのですが、匿名性とプライバシーを重視している名家は人知れず存在してるようです。やはり新興成金とは一線を画しているのです。

 

しかし名家意識と莫大な富が必ずしも幸福をもたらさないことは、ニックの親族たちが証明してくれています。従妹のアストリッドは堅実な夫から離婚を持ち出されているし、年ごろの息子や娘たちには「本当に金目当ての」男女が群がってくるし、中には勘違い野郎のバカ息子だっているのです。そんな中で、庶民的なヒロインは、次々にに襲い掛かってくる手ごわい敵や難題に対応できるのでしょうか。

 

舞台がシンガポールということもあって、クィーン・アストリッドやブキ・ティマやケイアン・ヒルズなどの高級住宅地、ラッフルズやグッド・ウッド・パークなどの名門ホテル、さらに上流階級であっても「食事を国技とする」シンガポーリアンなので庶民的でも美味しい食事など、懐かしい地名や料理が数多く登場する作品でした。ちなみに著者もシンガポールの富裕層出身だそうです。

 

2024/4