このシリーズも第21巻となりました。開始直後のマンネリは、命に限りある者たちの生死観を深く掘り下げることで回避しましたが、再び停滞気味に感じているのは私だけでしょうか。もっともこれだけ続くと「偉大なるマンネリ」の域に近づいているのかもしれません。
「おくりもの」
長崎屋の主人・藤兵衛が馴染み客から贈り物の助言を求められます。若旦那の一太郎も一緒に考え始めますが、人が本当に欲しいものとは、金で贖うことなどできず、そもそも人へ贈ることなど不可能なものかもしれませんね。おりしも贈り物の届け先では、妻を亡くした主人の縁談と、子供たちの母替わりになって行き遅れている妹がいたのですが・・。
「こいごころ」
北方の妖狐の一太郎への願いは、妖力を失って消滅しかかっている子狐の笹丸を、大妖おぎん様の伝手で荼枳尼天の庭に招いて欲しいというのものでした。実は笹丸はかつて親切にしてくれた一太郎を慕っている女の子だったのですが・・。
「せいぞろい」
病弱な一太郎に大甘の両親は、一太郎の誕生会を開きたいと考えます。当時は太陰暦ということもあってこんな風習はなかったのですね。妖たちも宴会を開きたいというのですが、参加希望者がどんどん増えていってしまい、盗賊団も絡んで大騒ぎになってしまいます。
「遠方より来たる」
一太郎の主治医の源信先生が隠居を決めたことで、後継者探しが始まりました。長崎屋に認められれば名医との評判が立つとあって、候補者が大勢名乗りをあげます。その中には遠く京の鳥辺野からきた火幻と名乗る石もいたのですが、彼は妖だったのです。そんな中、源信先生の秘伝の薬帳が紛失するという事件が起こるのですが・・。
「妖百物語」
新任医師の火幻と一太郎は、最近江戸で流行っている「百物語の会」に招かれました。大店の旦那方が主催するので断り切れなかったのです。怪異を招く怖さを知っている2人は理由をつけて中座するつもりだったのですが、親たちに反抗する大店のどら息子たちが怖い妖を呼び込んでしまいます。仁吉も佐助のいない中、一太郎は窮地を脱することができるのでしょうか。
2024/3