りぼんの読書ノート

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しゃばけ22 いつまで(畠中恵)

しゃばけシリーズ」の第22作は、17年ぶりとなる長編でした。前巻で登場した一太郎の新たな主治医・火幻の正体が明らかになります。彼は平安時代の葬送地であった鳥辺野で焚死した僧の亡霊だったのですね。通常、妖とは生まれ出た土地に縛られるものなのに、火幻はなぜ江戸に出てくることができたのでしょう。それを羨んだ西の妖怪で人面の怪鳥・以津真天(いつまで)が、長崎屋の若だんな・一太郎に思わぬ災難をもたらします。

 

悪夢を食べる獏こと馬久の力を逆用して自身の悪夢に縛り付け、次いで馬久を助けに行った火幻と一太郎も影内へと飛び込ませてしまいます。そして一太郎が目覚めた先は、なんと5年後の江戸だったのです。以津真天の妖力を遥かに超えるような出来事を起こしたのは、もっと大きな力のようなのですが・・。

 

寿命に限りのないものたちにとって5年などは短い時間にすぎません。妖たちは一太郎との再会を喜びますが、長崎屋は大変なことになっていました。一太郎が行方不明になる直前に開発していた薬の調合升を盗み出したあくどい商売敵の大久呂屋によって長崎屋は没落させられていたのです。しかも一太郎の許嫁だった少女・於りんちゃんは美しい娘へと育っていましたが、武家への縁談が纏まろうとしていたのです。まるで「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー PART2」のような展開ですが、一太郎らは無事に過去へと戻ることができるのでしょうか。そして一太郎らをタイムスリップさせた大きな力とは何だったのでしょうか。

 

しゃばけシリーズ」の長編は、第1巻『しゃばけ』と、第5巻『うそうそ』に続く3作目です。連作短編形式に相性の良い物語と言えるのでしょうが、長編はやはり読み応えがありますね。

 

2024/3