りぼんの読書ノート

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ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く(ポール・ギャリコ)

著者はロンドンの寡婦で通いの家政婦をしている「ミセス・ハリス」が気に入ったようで、彼女を主人公とするシリーズを4作書いています。本書は『ミセス・ハリス、パリへ行く』に続く第2作です。

 

パリから帰ってきて普通の生活に戻ったハリスおばさんには、気がかりなことがありました。それは隣の部屋に住む家族が、里子のヘンリー少年を虐待していること。少年の両親は離婚しており、母親は息子を里子に出したまま再婚して音信不通。米兵であった父親も帰国した後に行方不明になっています。おせっかいにも少年をアメリカにいる実の父に会わせてあげたいと思っていたハリスおばさんに、その機会が訪れました。彼女の顧客である社長夫妻がニューヨークに転勤することになって、ハリスおばさんを連れていきたいというのです。

 

思い立ったら止まらないハリスおばさんは、親友で料理上手なバターフィールドおばさんと一緒に、なんとヘンリーを密航させようとするんですね。ごった返しているイギリスの港は難なくクリアし、船員も手玉に取ることができたものの、厳しいニューヨークの入国検査官をクリアすることなど可能なのでしょうか。パリで知り合ったシャサニュ侯爵がアメリカ大使に任命され、同じ船に乗っていることを知るのですが・・。

 

パリでディオールのドレスを購入した時と同様、ハリスおばさんの人柄と熱意が次々と奇跡を起こしてしまう物語です。しかも彼女のせいで面倒に巻き込まれた人たちも幸福になるという、おとぎ話レベルのハッピーエンド物語ですが、すべて「信じる力」がなせる業なのでしょう。「老いらくの恋」すら予感させてくれますが、そちらはどうなるのでしょうか。

 

2024/2