りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ボーン・クロックス1(デイヴィッド・ミッチェル)

クラウド・アトラス』の著者による壮大なファンタジーは、世界幻想文学大賞を受賞していますが、ブッカー賞にもノミネートされているように、ジャンルを超えて楽しめる作品でした。1984年から2043年にかけて、イングランド、スイス、イラク、中国、オーストラリア、アメリカ、ロシア、アイスランドなど世界各国に広がる物語であり、2段組で600ページを超える大作ながら、一気読みしてしまいました。間違いなく今年のNo.1作品候補です。読書ノートも長くなりそうなので、2回に分けて書くことにします。

 

「第1章」暑さつづき 1984年

英国のパブの娘である15歳のホリー・サイクスは、恋人に裏切られ、母とも喧嘩して家出。それは弟ジャッコが行方不明になったことを知らされて終わるのですが、その過程で彼女はさまざまま不思議な体験をするのです。謎の老婆エスター・リトルとの不思議な約束、異空間での戦闘の幻視、ヒッチハイクさせてくれた恩人の急死。それは遠い過去から続いてきた「時計学者(ホロロジスト)」と「隠者(アンコライト)」の戦いの一部だったのですが、ホリーには真相を知る由もありません。

 

「第2章」我が待ちきたれる没薬、苦き香 1991年

語り手は生意気はケンブリッジ大学生のヒューゴ・ラムへと移ります。将来の野心のために認知症患者のコレクションを奪い、同級生から金を巻き上げたりしていたヒューゴは、スイスに旅行した際に、スキーリゾートで働いていたホリーと知り合います。しかし彼に目をつけていた美女コンスタンティンによって「隠者」の一味に加わるよう迫られるのでした。

 

「第3章」結婚パーティ 2004年

30代になったホリーは、家出騒動の際に助けてくれたエドと結婚しており、イーファという娘を授かっていました。戦場ジャーナリストになっていたエドは、ホリーの妹の結婚式を機にイギリスで暮らす予定だったのですが、なぜ何度も生命の危機に陥ったイラクへと戻ろうとしているのでしょう。家族とは何かというシンプルな問いと、ホリーが無意識に口走る予言の不思議さが語られます。

 

「第4章」クリスピン・ハーシーのロンリー・プラネット 2015年

スランプに陥っている中年小説家クリスピンは、世界中で開かれるブックフェアや朗読会を回っていますが、人気の低落をヒシヒシと感じています。そんな彼は、自伝的な不思議な作品をヒットさせて人気作家となったホリーとあちこちで遭遇。彼女と親交を結んだクリスピンは「隠者」の一員となっていたヒューゴから尋問されますが、何も知らないことで救われます。しかし彼は「隠者」の秘密を暴いたという狂信的なファンによって殺害されてしまうのです。エドが戦争に巻き込まれて命を落としていたこともこの章で告げられます。

 

ここまでではなんのことかわかりませんよね。ここまでの物語の意味は、「第5章」で明らかになっていきます。

 

2023/8