りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2(ブレイディみかこ)

人種も貧富も学力もごちゃまぜな、まるで世界の縮図のような「元・底辺中学校」に入って、悩みながらも成長してきた息子は、13歳になりました。「そろそろ」と思っていたら「やっぱり」起こったのが、思春期特有の問題ですが、それだって単純ではありません。いきなり「LGBTQ」にぶち当たるのです。ノンバイナリーを公言する教員や、ナプキンも買えない「生理貧困」に悩む同級生もいる中で、息子はどのような恋愛をするのでしょう。実は本書の中ではそこまで書かれていないのですが・・。

 

もちろん、人種や宗教や貧富の問題も絶えません。ヒジャブは親ムスリムのシンボルなのか。それとも女性抑圧と差別のシンボルなのか。反イスラエルを公言するパレスチナ人の少年は、マッチョを気取っているだけなのか。息子に「俺みたいになるなよ」と語りかける労働階級の父親の悲しさだって、理解できる年ごろになってきているのです。

 

ちなみに著者が最大級のショックを受けたのは、息子が「ビートルズのメンバーを挙げよ」という音楽の筆記試験で「ジョン・レノン」と書けなかったことのようです。音楽好きが高じて英国にやってきた著者は「12年間の養育法はすべて間違えていたのか」とまで思ったとのこと。かつての音楽の神は、試験前に覚えておく人名のひとつになってしまったのですね。

 

主に息子さんの成長過程が綴られているった作品ですが、著者自身の素晴らしさを実感したエピソードを記しておきましょう。GCSE(中等教育終了時の全国統一試験)の国語のスピーチのテストで「社会を信じること」をテーマとした息子は悩み抜きます。そこで母は言うのです。そこまで大きなテーマを選んだんだったら、もう点数なんてどうでもいいよ。すごく難しいことはバシッと言い切れる結論にはならない。わからないって正直に終わるのもリアルでいい」と。やはり「この母にしてこの息子あり」ですね。

 

2023/7