りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

彼女の名前は(チョ・ナムジュ)

韓国フェミニズム文学を象徴する大ベストセラーとなった『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者が、多くの女性たちのインタビューに基づいて綴った短編集です。著者は本書について「あの本のなかでキム・ジヨンは自分で声をあげない。自分も、社会も、認識しているだけではだめだと感じ出た。半歩でも前に進もうと、そのためにこの本を書いた」と語っています。

 

第1章「それでもずっと、ときめきつづけていられる」若い女性が経験する不条理に立ち上がった者たちの物語。企業内セクハラを訴え出た女性。愛嬌ポーズを強いられる同性の推しアイドルへのエール。父親の進める結婚を拒む29歳の女性。母親の愛娘としての人生に抵抗する娘たち。

 

第2章「私はまだ若く、この闘いは終わっていない」は、結婚や出産がもたらした不条理との闘いの物語。義母の干渉に耐え切れずに離婚した姉。誰かの何かになってはいけないという姉の忠告を決意して嫁ぐ妹。育休取得第1号になった若い母親。変わるべきは夫と学校と会社と社会だと気付いた新米ママ。不動産価格の高騰に悩む夫婦。同居中の同性の恋人との関係に悩む女性。ストライキを闘った女性たち。

 

第3章「はあちゃん、元気でね」は、母の世代の物語。娘たちの弁当を作るストライキ中の給食調理師。仕事に誇りを抱くバスの運転手。正社員の資格を勝ち取った国会の清掃職員。第2章に登場した姉妹の苦労に胸を痛める母親。孫を愛しながらも自分の人生に悩む祖母。村に配備されるTHAADに反対する老女。

 

第4章「たくさんの先が見えない道のなか、かすかな光を私は追いかけてる」では、闘いを始めたばかりの若い世代の物語。ろうそくデモに参加して大学に不合格となった女性。梨花女性大のデモで傷ついた女性。父親によるDV被害に苦しんだ娘。母親の反対を押し切って商業高校への進学を選んだ娘。値上げされたナプキンを買えなくなった生活困窮家庭の娘。学校で空き時間を作るべきだと主張する11歳の少女。

 

そしてエピローグ「78年生まれ、J」では、著者自身が「大人になった今こそ、自分を取り巻く社会にも責任を持つべき」と語り掛けてきます。傷つけられながらも社会や家庭の矛盾と闘う韓国の女性たちと、カタツムリのように遅い社会の変化を我慢して待ち続ける日本の女性たちの、どちらがどうという問題ではありませんが、この数年で日韓の「ジェンダーギャップ指数順位」は逆転しています。

 

2023/6